物語性の否定、日常の愚直な描写。二ノ宮隆太郎監督作品「お嬢ちゃん」

映画を観た後に、入口にいたはぎのーさん(当時は知らなかったけど)がこの映画のチラシを配っていた。

それはずっと前にことだったけど、記憶には残っていて、なんとか上映終了日までに滑り込むことができた。

週に1度は映画をみるようにしているが、それでも観たい映画を全部観ることができない。

そんななかで観客を映画館に向かわせるには、チラシ配りの地道な活動が生きるんだなーと思った。

二ノ宮隆太郎監督作品「お嬢ちゃん」

21歳、鎌倉で祖母と暮らし、甘味処でバイトするみのりの生活を描く。海街ダイアリーでも思ったけど、鎌倉ってなんてことはない景色でも絵になるなあ。

みのりのキャラクター造形が素晴らしい。いつも不機嫌で寄ってくる男たちにも高圧的で、意外と素直で善良で。そんなみのりのことを大好きになってしまった。

登場人物がやけに多くて、でも彼らはみのりとほとんど物語のなかで交わらない。彼らは彼らの人生を生きていく。基本ワンカット長回しで手持ちのカメラで映像がグラグラ揺れる。

無駄なんじゃないかと思うシーンが多くて間延びしているように感じられるのが評価の分かれるところだと思う。

個人的には、作品が物語を持つことを否定しているからじゃないかと思っている。

映画や小説の世界では劇的なことが立て続けに起こって目が離せないけど、日常の生活ではそうもいかない。

意味のないこともするし、どうでもいいことを話してまったりしているときもある。日常のさまざまなことが結末への伏線になることはまれだ。

誰しもが持つ日常のひとときを愚直に描写したかったのだと思うのだ。だから物語の起承転結もない、ドラマチックな出来事もない、でもみのりはこの作品の真ん中にたち、世界観を作っている。

ヤマギワMVPはみのり役の荻原みのりさん。立っているだけで絵になる。タバコを吸っているだけで絵になる。おすすめはラストの海辺のシーン。みのりの悪魔の表情にゾクっとした。

ラストは髙橋雄祐さんもちょっと出ているのよね。もうちょっと出番増やして~!

今日は演者の方が登壇。主要人物はいないのだが、みんなお揃いのTシャツを着て、わちゃわちゃした感じが好きだ。楽しそうよね、映画づくり。

話題に出たのが「台本がないんじゃないか?」問題。会話劇だったし、確かに普通にしゃべっている感じがした。

でも答えは「ほぼ台本通り」。演技してる感を出しすぎないようにという監督の指示があったそうだ。

みのりとほんの一瞬しか交差しない人がたくさん登場して、みのりに関係なく生活しているのだが、違和感もなく 誰もが 個性を発揮していたところがすごい。

このシーンにはどんな意味があるのか?を深く考えず、まったりと観てみのりを愛でようではないか。

プロフィール
提出用写真フリーライター 山際貴子 東京都中野区在住のフリーライターです。 IT系を中心に企業取材、インタビュー、コラム執筆を行っています。お仕事のご依頼はこちらからお願いします!→お問い合わせ

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