海に船を浮かべて時を待つ。白石和彌監督作品「凪待ち」

白石監督といえば、アウトローを描くことに長けている監督というイメージがあった。TVドラマ「フルーツ宅急便」の演出も手掛けている。

白石和彌監督作品「凪待ち」

ギャンブルから足を洗い、恋人の故郷・石巻に帰る男の物語。

脇を固めるキャストのバランスの良さ、安定感がこの作品に重みを与えたと思う。西田尚美さん演じる恋人・亜弓の心配性なキャラクターと口数少ないながら郁男を思いやる父・勝美役の吉澤建さんの渋さが作品に融合している。吉澤さん、渋いなあ。石巻の漁港が似合っていた。

娘・美波役の恒松 祐里さんも今後注目の女優さん。際立つ美しさがありながら、汚れ役もできそう。役者としての幅の広さを感じた。リリー・フランキーさんも数々の監督に指名される理由がこの作品でわかった。

ヤマギワMVPは郁男役の香取慎吾さん。ファンは観に行かない方がいいんじゃないかというくらい、スクリーンの中の郁男は香取慎吾さんではなかった。

惜しむらくは郁男のキャラクター造形。もう少しふくらませてもよかったんじゃないかとは思う。実は無邪気な一面があるとか。動物と触れ合う時だけニッコニコになるとか。その方が後半のアウトローに磨きがかかったのではと思う。

あと恋人の父と娘がなぜ郁男に絆を感じるようになるのか、その描写がもう少しあったら説得力があったかなあ。

香取さんの存在感はやっぱりすごい。霧に煙る石巻の 海にたたずむだけで絵になった。

役者さんの意外性を引き出す白石監督の腕はこの作品でも冴えわたっていた。

プロフィール
提出用写真フリーライター 山際貴子 東京都中野区在住のフリーライターです。 IT系を中心に企業取材、インタビュー、コラム執筆を行っています。お仕事のご依頼はこちらからお願いします!→お問い合わせ

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