この前、「月極オトコトモダチ」を観にアップリンク吉祥寺に行ったら、ロビーに今泉監督がいて、なにやら熱心に語っている。
「こんなところでトークショーをやるんだ」と思っていたが、実際はスクリーンでやっていて時間切れとなり、ロビーはその延長戦らしい。なんて映画愛にあふれるひとなんだ。
こういう監督の尽力を目の当たりにすると、
「日本映画、もっと世界で評価されろ~!!」
と思う。
今泉力哉監督作品「愛がなんだ」
原作は直木賞作家の角田光代さん。よくある何気ない日常をドラマ性をもって描き出すのがうまいなあといつも思う。後で原作も読まねば。
作品の見どころはなんといってもテルコ役の岸井ゆきのさん。もうね、めちゃくちゃかわいい。朝ドラに出ていたりしてなんとなく知っていたつもりだったが、こんなに魅力的な人だとは。この可愛さで路上ラップをやられた日には、こっちはもうメロメロよ。
岸井さんだけでなく、脇を固める役者さんがそれぞれ輝いているのもこの作品の魅力のひとつ。ナカハラ役の若林竜也さんはその眼差しが、内面からにじみ出る渇望感が、 今でも 心に残っている。
もうひとつの見どころはやはり成田凌 さん演じるマモルのクズっぷりとテルコの愛情の対比だろう。マモルは確かにクズ男なのだが、嫌みがないヒドさ、というギリギリの線をうまく描いているように思う。テルコの愛情がもはやホラーだから、その非日常性とマモルの日常性の対比が際立っていた。
個人的に大好きなのが葉子の自宅である古民家でのシーン。葉子役の深川麻衣さんの佇まいがこれまた古民家によく合う。 「日本ボロ宿紀行」を観ていたからかもしれないけど。 テルコと葉子が軒先で大げんかするシーンもとても美しかった。
ヤマギワMVPはすみれ役の江口のりこさん。どの作品に出ていても圧倒的な存在感があるが、主役をじゃませず作品の魅力を高めることができる方だと思う。 すみれの振る舞いにテルコへの愛情が感じられて、なんだか救われた。
アップリンク吉祥寺では、映画に登場する仲原青名義で写真展が開催されている。テルコやマモルを撮影した写真があって、映画をみたあとに見てまわると楽しい。
小粋なことをするじゃないか、アップリンク吉祥寺。
正直なところ私があの映画の中にいたら、登場人物全員に説教してまわりたい。それくらい誰ひとりとして共感できないし、展開もやりきれない。それでも引き込まれるのが小泉マジック。
若い女子が連れ立って観ているのを見かけて、自分も誰かと観るべきだったと思った。「片思いは愛か?」でそのあと2時間は語り合えそうだ。
みんなであーだこーだ言えるから映画って楽しいのね。