「SANAE TOKEN」騒動で、ミームコインを考える

こころみマガジン

「SANAE TOKEN」が世間を賑わせている。

高市早苗首相の名前を冠にしたトークンのことだ。

公式サイトでは首相の名前やイラストが掲載されているにもかかわらず、首相が関与を正式に否定。騒動が大きくなっている。

「そもそもトークンってなに?」と思う人も少なくないだろう。

手軽に作れるコイン「トークン」

ということでまずはトークンから。

トークンの用途は幅広いが、「SANAE TOKEN」は、コミュニティの中で使われるコインのこと。

コミュニティの中でインセンティブとしてコインがもらえ、コインは売買することができる。

「SANAE TOKEN」では、国民の声を集めて政治に届ける取り組みに対して何らかの貢献をすると、トークンが付与される仕組みだった。

トークンは、ビットコインのような「仮想通貨」と同じ意味で使われることが多い。

しかし正確には、両者は異なる。

仮想通貨は独自のブロックチェーンを構築し、その上で仮想通貨を発行する。

それに対して、トークンは既存のブロックチェーンの上で発行する、という違いがある。

ブロックチェーンは世界中に無数のコンピューターの資源を使う必要があり、構築は大変。

トークンなら、ツールを使って数分で作れる。「ヤマギワトークン」みたいに、自分自身のトークンを作成することも可能だ(流通させるには取引所に上場する必要がある)。

この他にもトークンは、プロジェクトの方針を決める「投票権」や、アート・ゲームアイテムなどの唯一無二性を証明する「NFT」、証券や不動産などを有価証券の形でデジタル化する「セキュリティ・トークン」など、多様な用途がある。

「SANAE TOKEN」の何が問題か

国民の声を集めて政治に届ける取り組みの貢献度に応じて付与されるコインなので、取り組み自体は意義あるものだ。

問題なのは「首相のお墨付きという印象を与えたこと」「トークノミクス(トークン設計)」「無登録営業の疑い」にある。

よくメディアで取り上げられているのが、発行枚数に占める運営側が持つ枚数の割合。「SANAE TOKEN」では、「Reserve / Ecosystem(リザーブ)」という名目で過半数を超える65%を保有している。発行枚数は10億枚のため、6.5億枚となる。

通常は、投資家を保護するために、運営側が保持するトークンは発行してから一定期間は売却できない「ベスティング(売却制限)」が設けられている。

今回リザーブにはべスティングが設定されていなかった。価値が高まったところで、運営側が大量のトークンを売り抜ける可能性もあった。

また、これだけ大量の枚数を市場に流通させている以上、「暗号資産交換業を営むとみなされる」という指摘がある。

暗号資産交換業を営む場合、日本においては登録が必要だが、この団体は登録されていない。これが資金決済法に違反する可能性がある。

端的に言ってしまえば、「詐欺でなはいか」という疑いなのだが、わかっていないことが多すぎるし、法整備も追いついていない。

金融庁が実態把握に乗り出したので、今後は少しずつ明らかになるだろうか。

「ミームコイン」が支持される背景

「SANAE TOKEN」はミームコインと呼ばれる。ジョークや流行(ミーム)にあやかってコイン化したものだ。

「おもしろそう!」とみんなで盛り上がって価値を高める性質があるので、社会的な意義や実用性がなくても成り立ってしまう。

一瞬で盛り上がり、一瞬で冷める。この盛り上がりの曲線に価格が連動するため、ハイリスク・ハイリターンの投機的な性質がある。

ミームコインがもてはやされるのは「どうせ働いたって生活が豊かになるわけじゃないし」というZ世代の「金融ニヒリズム」が心理的背景にあると言われている。

よく若手社員の方にインタビューをすることがあるが、熱意を持って働いている方ばかり。金融ニヒリズムがはびこっているとは、にわかに信じがたい。

ただ、働くことが豊かさと結びついていた団塊世代とは、感覚が違うのだろう。

団塊世代が豊かな生活を送っていたわけではないのだが、働き続けることで「前よりも豊かになっていく実感」が得られたのだと思う。

経済的に自立している人が遊び感覚でミームコインを買ってもよいと思うし、何らかのインセンティブとしてコインがもらえて、今後価値が上がるかもしれない楽しみを持つのもよいと思う。

でも「バリバリ働いて、稼いで、良い暮らしをしよう!」と思える社会(思わない自由もある社会)が健全だと思うのだ。