MONGOL800が2001年にリリースした同名曲のオマージュ。モンパチっていうと私にとっては青春の歌ではないのだが、音も言葉もストレートに心に入ってくるなあと好ましく思ってる。
橋本光二郎監督作品「小さな恋のうた」
この物語はオリジナルストーリーなのだが、モンパチのように、沖縄にある高校の同級生がバンドを結成する。初めは4人で結成されたが、紆余曲折あってスリーピースバンドに落ち着くというところも同じだ。
スリーピースバンドはドラムス、ギター、ベースという最小構成のバンドのこと。若いころはスリーピースバンドは音の厚みがないと思っていたが、今はこのシンプルな音の響きが、この上なく魅力的に感じる。
沖縄の素晴らしいロケーションは物語に鮮やかな色彩を添える。防波堤で舞がギターを背負って亮多と航太郎と歩くシーンが好きだ。防波堤はいくつかの象徴的なシーンで出てくるのだが、どれもよかった。海の見える屋上での演奏もカッコイイ。
そして、彼らには基地の問題が色濃く影を落とす。映画では沖縄県民と基地との対立という構図になっているが、実際にはもっと沖縄の人達は複雑な気持ちがあるのだと思う。基地の問題についてこの物語ではかなりの尺を取っているだけに、対立の構図一辺倒に物足りなさを感じた。がしかし、モンパチは反基地のスタンスを取っているのでその思いを尊重しているのだろうし、がんばって踏み込んだ感もある。
惜しいのが譜久村舞と兄の譜久村慎司、そして基地に勤める父との関係性の描写が足らないところだ。舞がなぜ兄を尊敬し、父を軽蔑してきたのか。その感情のMAXが学園祭の後の、舞の独白のシーンにつながっていると思うのだが、その関係性について希薄なので、いまひとつ感情移入できなかった。舞役の山田杏奈さんが鬼気迫る素晴らしい演技をしたにもかかわらず、だ。映画に感情移入できるのは俳優さんの力だけではないのね~と今更ながらに思ってしまったよ。
ヤマギワMVPは亮多役の佐野勇斗さん。大輪の向日葵のような明るさと勢いが物語の骨格を作っていたと思う。 山田杏奈さんもかわいい。演技も歌声もよかった。
全編にわたってモンパチの曲があふれ、音楽の素晴らしさに浸れる映画。