数年前、複数の3Dプリンターのメーカーを取材したことがあり、いろいろなことを教えていただいた。
3Dプリンターというと、「樹脂」の造形というイメージがあるが、金属用の3Dプリンターもあるし、樹脂でも「炭素繊維」の素材(フィラメント)を利用すれば、軽くて金属並みに強度が高いパーツを造形することができる。
デジタルで設計したものを遠隔で造形できるので、物流がない地域でも3Dプリンターと素材があれば、道具やパーツを作って大きな造形物を作ることも想定できる。
そう、それが「家」であっても。
この当時から3Dプリンターで家を建てるというニュースはあって、「SFみたいだな」と思ったものだが、現在は日本でも2階建ての住宅が施工されている。
下記の動画は、宮城県栗原市に3Dプリンターで建設された2階建ての住宅。
動画を見ると、3Dプリンターが造形する横で大工さんが作業しており、完全に無人で建てられるわけではない。
建設3Dプリンターとは?
3Dプリンターは、次の手順で造形される。
- 3Dデータを作成する
- 3Dデータをスライス(輪切り)データに変換する
- 3Dプリンターがスライスデータに従って、ノズルから材料を積層(印刷)する
建設3Dプリンターは、ノズルから押し出す素材をモルタルやコンクリートにすることで、強度の高い家を作ることができる。従来は職人の高いスキルが必要だった曲線の建物も思いのまま。
先ほど紹介した事例では、12日で建物を完成させたが、兵庫にある日本初の3Dプリンター住宅メーカーであるセレンディクス社は、3Dプリンターで建設した住宅を展開しており、50平米の家であれば、期間は数日、価格は550万円(税別)で建てられる!
同社はウクライナでも住宅を破壊された市民への支援として3Dプリンターの住宅を建設している。
■「根底にあるのは怒り」…日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来https://www.newsweekjapan.jp/articles/-/315068?display=b#google_vignette
建物全体ではなく、パーツを3Dプリンターで作るという方法も考えられる。部品を搬送する必要がなくなるため、コストや工数の削減が期待できる。
家が「印刷」される未来
この建設3Dプリンター、海外では実用化フェーズに入っている。フランスでは延床面積800平方メートルの三階建て12ユニットアパートメントが建設された。
■PERIグループがフランスにヨーロッパ最大の3Dプリントアパートメントを建設https://sekapri.com/%E5%BB%BA%E8%A8%AD/20260428-20820
日本で課題となるのは、耐震基準をクリアすること。モルタル系材料は国土交通省が定める指定建築材料ではないため、構造の主要な部分には使用できない。
指定外の材料を使用するには建物を建設するたびに認定をとる必要があり、コスト、労力がかかってしまう。
現在の建築基準法のままでは、3Dプリンターの適用範囲が限られる。そこで、国土交通省は2026年5月に建設3Dプリンターの法規制を大幅に緩和した。
もうひとつ、3Dプリンターや材料に精通している設計者が少ないという課題もある。3Dプリンターの活用の幅が広がれば、自然と解決していくのかもしれないが。
また、ノズルで押し出す方式では、鉄筋を組み込むことが難しい。ビルをまるっと建設するのはまだ先のことになりそう。
建設用の3Dプリンターも高額だし、課題は山積み。それでも工期や安さは魅力。住宅以外にも建物の需要は多いし、少しずつ広がっていくのだろう。
