現役の精神科医である帚木蓬生さんの原作。
笑福亭鶴瓶さん、綾野剛さん、小松菜奈さん、小林聡美さん。知名度のある方が出演している割にはひっそりと上映していたなあという印象の作品。
家族そろって楽しめる娯楽作品ではないが、いろいろと考えさせてくれる。つらい描写も多いのだが、いろいろな人に見てほしい。
平山秀幸監督作品「閉鎖病棟―それぞれの朝―」
閉鎖病棟というのは、精神科病院で出入口を常に施錠をする病棟のこと。この映画も小林聡美さん演じる婦長が入口を開錠して入る場面から始まる。
閉鎖病棟にいる患者の一人一人を細かく描写しながら生きづらい社会から身を守る思い、それでもなお募る外界への思いを表現していく。細かな違いはあれど、原作を尊重している物語構成になっていると思う。
患者の人生に戦争が暗く影を落としていた原作よりは新しい時代に設定してある。綾野剛さん演じるチュウさんも原作では中年男性の設定だ。
手練れの書き手である 帚木蓬生さんの原作だから仕方がないのかもしれないが、笑福亭鶴瓶さん演じる秀丸の行動が彼の人生の描写を省略しているがために説得力が弱くなっているのが気になった。
この作品のよいところは患者の生き様を描くことで、患者がどんな行動をとってしまってもやさしい視線を注いでいるところだ。たくさんいる患者を描くことで秀丸の人生が薄まってしまったとは思う。
ただ、秀丸は患者ではなく、でも患者に寄り添っている。秀丸の愛情は作品を通して感じられた。
ヤマギワMVPは 秀丸役の笑福亭鶴瓶さん。この役を山崎努さんや吉澤健さんといった超ベテラン俳優さんで見てみたいと思わなくはない。でも閉鎖病棟のスタッフや患者に慕われ、人生を絶望した人に生きる勇気を持たせる秀丸の慈愛が鶴瓶さんから感じられ、監督が熱望したのもわかる気がした。
セリフはないがどんぐりさんも患者として出演している。小林聡美さんの決して派手ではないが確かな存在感がある演技にも注目。