罵詈雑言の隙間にある深い愛情。「松本」の「遺書」

引越しをする度に本は売ってしまうのだが、それでもなお今、本棚にある。
「松本」の「遺書」松本人志著

ダウンタウンの松っちゃんが週間朝日に1993年~1995年まで連載していたコラムをまとめたもの。

松っちゃんは今でこそお子さんもいて丸くなっているが、このころはトンガリまくっていて、ちょっと「コワイお兄さん」だった。

あまりに軽妙で読む人を引き込む表現。ゴーストライター疑惑もあったほどだが、文章もイラストも自分で書いていた。

ちなみに原稿料は1回5万円。松っちゃんはこの少なすぎる報酬が大いに不満だったらしいが、後に第一弾「遺書」が出版されて200万部以上のベストセラーになったわけだから十分もとは取っただろう。

この本のウリは社会の問題に鋭く切り込むケンカ口調とお笑いに対する真摯な思いなのだが、私は後輩の板尾創路や相方の浜ちゃんに対する愛情に注目してほしいと思う。

思えばこの時代の板尾創路は事件を起こし、吉本興業を無期限謹慎処分となっていた。松っちゃんは板尾がもう一度チャンスをもらえるよう吉本に直訴したのだ。

いまや板尾創路はNHK朝ドラにも出演し、俳優としても活躍している。才能をつぶさんでよかったなあ。

SMAP中居くんのお父様が存命で入院していたころ、松っちゃんとタモリと鶴瓶と香取くんがお見舞いに来て、みんなが帰ったあとも松っちゃんは「急に静かになるとお父さんが寂しくなるから」と一人病室に残ったという。

そういう愛情深さに通じるものがこの本にもある。

今読んでも松っちゃんを好きになってしまう本。

プロフィール
提出用写真フリーライター 山際貴子 東京都中野区在住のフリーライターです。 IT系を中心に企業取材、インタビュー、コラム執筆を行っています。お仕事のご依頼はこちらからお願いします!→お問い合わせ

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