この映画を観た時に、プロデューサーさんと監督さんのトークショーがあった。
その時の話を聞いて、恥ずかしながら初めて「スプラッター映画」という言葉を知った私。
残虐な殺人シーンが生々しく描かれる映画の様式らしい。いや~こういうの苦手。
でも思わず行かずにはいられないほど好きな俳優さんばかりが出ていて、本当にナイスキャスティングな映画なのだ。
森田和樹監督作品「ファンファーレが鳴り響く」
吃音に悩む高校生が、自分をいじめるクラスメートを殺してしまった女子高生と逃避行する。
「カメラを止めるな」級の予算で撮影したらしい。カメ止めといえば、製作費300万円、興行収入30億円超という、ある意味夢の映画。出演者の方はワークショップに参加した無名の俳優さんでノーギャラだという話もあるが、ファンファーレは他の作品にも出演している私でも知っているような実績のある役者さんばかり。ノーギャラとはいくまい。
どうやってやりくりしたのか不思議でしょうがない苦しい台所事情とは裏腹に、冒頭の生徒全員で踊るシーンはすごく見応えがある。なんでも物語の前半を占めるすべての学校のシーンは1日で撮影したらしい。その中にダンスシーンも含まれているのだから、まさに神業。
残虐なシーンの連続に、「うわーこれ以上は目をつぶるぞ」と思った矢先におさまって、ほっと胸をなでおろす。脚本はもっとたくさんのスプラッター場面が用意されていて、そのためにプロデューサーさんはダンスシーンを削ろうとしたのだが、監督が譲らなかったという。監督、ナイスジャッジ~!
苦手な私だからこそ思うわけだが、スプラッター場面、本当にこんなに必要?
ふんだんに盛り込むなら、神戸明彦が「殺すのはいけない」という思いから快楽に変わるまでの過程をもっと描いた方がいいと思うし、後半に芽生える贖罪の気持ちとうまくつながっていかないと思うのだ。
木下ほうかさんのシーンはユーモアがあったと思うのだが、他の場面は違ったし、スプラッターありきではなくてどういう思いがあったかを伝えてほしかった。
最後のシーン、とてもよかったのでもっと生かせる過程にできなかったかなあ。苦手だからそう思うだけだけど。
ヤマギワMVPは祷キララさん。どの役を演じていても地でやっているように見える。笠松将さんの高校生役も見事だった。
残虐なシーンの合間にある風景が泣きたくなるほど美しい。これも限られた日程で撮影したのだからすごい。
もう少し予算を気にせずに映画作りできたらいいのにと思う今日この頃。