若者よ、投資せよ。「日経記者に聞く 投資で勝つ100のキホン」(日本経済新聞社編)

幼いころ、祖父がラジオでやっていた「株式市況」を毎日聞いていた。株式の銘柄名とその時の値段を前場が終わった昼間と後場が終わった夕方に延々とアナウンサーが読み上げるという番組だ。

銘柄と終値だけをただただ読み上げる仕事なんて、アナウンサーにとってはやりがいのない仕事だよなーとずっと思っていたが、正確に数値を読み上げつつ、時間内にきっちり終わらせるということが求められる非常に難易度の高い仕事だそうだ。

そんな株式市況は2010年から自動読み上げシステムによる放送になっている。>>株式市況音声合成システムの開発

今はインターネットで現在の価格も見れるし、各証券会社からは使い勝手の良いアプリが提供されているので、株式市況の番組は終わったんだろうな、と思っていたが、今でも夕方は放送していることがわかり、懐かしい気持ちになった。

そんなこんなで私にとって株式投資は身近なものだったが、一発!億万長者を目指す!!と意気込むと、大やけどを負うことも痛感している。

でも、それでもこれからの若い人には、確定拠出型年金(iDeco)とかNISAでコツコツ投資をしていくことをおすすめしたい。

「日経記者に聞く 投資で勝つ100のキホン」(日本経済新聞社編)

「投資で勝つ」という刺激的なタイトルを掲げてはいるものの、「投資の基本はインカムゲイン(配当)」という言葉が出てくる通り、きわめて堅実な内容。

例えば「株式投資で生計を立てていきたいのですが可能でしょうか」という質問に対し、「デイトレーダーは儲かる保証ゼロの投機」とにべもない。でもそれだけでなく、初心者がリスクを抑えてデイトレーダーを始める手順や、「マーケット・ニュートラル」の手法の紹介など、具体的なアドバイスもされているし、そのアドバイスが巷の本とは内容が違うので読み比べても面白い。

おすすめポイント1:ひとつのテーマが見開き2ページでまとめられている

この本の一番の美点がこれ。ひとつの質問に対する解説が見開き2ページでまとめられていることだ。忙しいときにも、ちょっとした時間に2ページだけ読むなんてことができる。

通読する必要もなく、ランダムに読めばよいので気軽だし、パラパラめくって興味のあるところだけ読むという使い方も可能。手軽でいて日本経済新聞社の証券部次長という(たぶん)エラくて現場取材の経験も豊富な方が執筆しているので、内容も充実している。

おすすめポイント2:初心者向けだが中上級者でも読み応えアリ

・・・というのは本書の触れ込みだが、初心者向けの本にありがちな、カラフルなイラストやわかりやすい図がふんだんに盛り込まれているなんてことはなく、硬派な雰囲気を醸し出している。ある程度投資の経験がある中級者向きと言っても過言ではない。

とはいえ、見開きマジックのおかげで読みやすく、初心者でも十分ついていけるし、基本的な事項は網羅されていると感じる。投資をしばらく続けてから読み返すと新たな発見もある。読んで終わりではなく、いつもかたわらに置いておきたい本、とでも言うべきか。

おすすめポイント3:会社の行動を知ることができる

「この本読んだら儲かりまっせ~」という巷の本とは一線を画そうとする矜持が全章に渡って感じられるのだが、私が一番読んでよかったなと感じたのが第5章の「会社の行動を知る」だ。

「会社の決算は信用できるのか?」「会社の掲げる中期経営計画はどれくらい本気なのか?」という質問に対して、それを見極めるポイントの解説が並ぶ。投資本ではなかなか触れない部分であり、会社そのものを捉えるための大切なエッセンスが盛り込まれている。

記事のタイトル次第でページビューが左右されるのはWebの業界ではお馴染みだが、同じようなことが紙の世界でも言える。だからこそ「投資に勝つ」という魅惑のフレーズを使ったのだと思うが、本書はNISAやETFに説明が割かれているように、また、「投資の神様」と呼ばれる長期投資を基本とした運用をしているウォーレン・バフェットについて解説されているように、長期投資に焦点が当てられている。もちろん長期投資だって「投資に勝つ」という側面はあるのだが。

ということで短期間で多くのリターンを望むテクニックを望む人よりは長期で安定して運用したい人向け。だが、どんな投資姿勢であれ、企業の仕組み、企業の資金調達の仕組み、株取引の仕組みの基本を学ぶことは大切で、本書を読めばある程度網羅できる。

ちょいちょいつまみ読みをするのにおすすめの本。

プロフィール
提出用写真フリーライター 山際貴子 東京都中野区在住のフリーライターです。 IT系を中心に企業取材、インタビュー、コラム執筆を行っています。お仕事のご依頼はこちらからお願いします!→お問い合わせ

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