「左様なら」に出ていた近藤笑菜さん、日高七海さんがこの映画に出ていると知って観にきたが、もはや大ベテランの風格のあるお二人の安定感はこの作品には必要であった。
そして主人公・未来役の南沙良さんや準主役ともいえるナノカ役の原菜乃華さんはまだ10代なのだが、かなりの実力派。
このところ20代の人が高校生役をするのも珍しくなく、やはり10代の人を使うのは技術的に難しいのかなと勝手に思っていたが、この作品を観て、それが誤解だと知った。
大崎章監督作品「無限ファンデーション」
上映の少し前に席につくと、場内には西山小雨さんの「未来へ」がBGMとして流れている。K’s cinemaは初めて来たのだが、なかなかきれいで、心憎い演出がある。 ロビーには、作品の取材記事が展示されているのも良いね。
西山小雨さんが監督の映像に惹かれて、「MVを作ってください!」と直談判したんだそうな。そこからMV制作につながり、この作品が生まれたのだから、動くってことはいろいろな可能性を秘めているということよね。
さらに作品上映の前に「未来へ」のMVが流れるのだが、ぼんやりみてたらなんと上毛電鉄が出てくるではないか。
どうやら大崎監督は我が群馬県の出身らしい。この作品も全編出身地である群馬県の玉村町でロケをしている。
セリフはすべて即興だ。即興の作品というと是枝裕和監督作品「誰も知らない」を思い出す。とても自然な会話が交わされるというところはリアリティを追求するのによいと思う。
じゃあ脚本はいらないかというと、そうではないと思う。練られたセリフは後々になっても心に残ることが多いし、作品に力を与えるともう。
西山小雨さんは準主役で出演していて、曲もたっぷりと聴かせるのだが、不思議と作品に寄り添うように、溶け込むように響く。
そして未来役の南沙良さんがチャーミング。表情も表現もふり幅が大きくて心を動かされる。そしてあの感情を爆発させるシーン。本当にモノホンのJKなのだろうか。おそるべし。
圧巻は部内でのケンカのシーン。やはりそこは近藤笑菜さん、日高七海さんがいてこその緊迫感で、大したことのない争いごとなのに、迫力があった。
惜しむらくは、演劇部員の池田朱那さんや白一点の佐藤蓮さんのキャラクターが生かされていなかったことか。部員も少ないのだし、キャラをしっかり造形した方がもっとメリハリができたと思うのだが。
しかし、JKたちの魅力を見事に引き出したこの作品、映画を観た時は監督を存じ上げなかったが、さぞかしJKに近い年齢の監督が撮ってるんだろう。
と思いつつ、帰途につこうとすると、「監督がロビーにいらっしゃってます!」というスタッフさんの声が。
なぬ?私が観たのは23時終わりのレイトショー。しかも平日の月曜だ。そんな時に監督が予告もなくふらりといらっしゃるなんて、なんて素敵なんだ。
そしてロビーを見るとアロハシャツを着た男性が「やあやあ」というように観客を迎えている。
えっ。あのおっちゃ・・・・失礼、あのおじさまがこの繊細な作品を撮ったの?!
南沙良さんのインタビューで「監督とは互いに信頼関係があったから作品を作り上げることができた」というようなことをコメントしていて、それは確かに作品からにじみ出てくる。JKと信頼関係を築ける大ベテラン監督・・・恐るべし。
ヤマギワMVPは千明役の日高七海さん。善悪ではない、誰しもが持つ【
毒 】が表現されていてドキっとする。
「才能」の壁と仲間内のイザコザが、自分にとってはもはや愛おしく思える。
登場人物ではなく、ゴミにピントが合っているような映像があるが、 実は人物は現実には存在せず、ただただ工場にゴミがあふれているのを表しているかのようだ。こだわりのカメラワークにも注目。