原作があり、しかもノンフィクションらしい。マジンガーZの地下格納庫を設計するだけ、という何とも地味な設定なのに、なぜこんなにも面白いのか。
英勉監督作品「前田建設ファンタジー営業部」
「マジンガーZ」は永井豪さんの漫画。天才科学者兜十蔵博士が地球制服をたくらむ敵から守るために、天使にも悪魔にもなるマジンガーZを発明し、敵に立ち向かうというストーリー。
マジンガーZ は、普段プールの下にある地下格納庫に隠されている。出動の時にはプールの底の扉が開き、マジンガーZ がせり上がってくるという仕組みだ。
この マジンガーZ を作る・・・ではなく、マジンガーZ を隠しておく地下格納庫を作るというのが今回の企画。しかも実際に作るのではなく、作ろう!と言ってお金を出してくれるクライアントがいると想定して、設計して積算までやってしまおうというものだ。
いや~地味よね。よくこういうことを思いついたなあ。
これに立ち向かうのは前田建設の広報担当者たち。一口に地下格納庫を作るといっても、 マジンガーZの身長は18m(だったと思う)。格納できるだけの深さを掘るだけでも大変だ。そこで掘削に詳しい社内の人(ヤマダ)を頼り、実際のトンネルを掘る作業を見学に行く。
そして マジンガーZが出動するときはプールの底の扉が開くのだから、流れ込んだプールの水をどうするのか、扉が水圧に耐えられるのかという問題がある。そこで今度は機械に詳しい社内の人(フワ)を頼り、ダムを見学に行く。
というように、実際の仕事の現場も撮影しているのがとても面白い。しかも仕事は一般の人には普段目にすることはないであろうもの。専門用語も飛び交うが、それを上手に調理して、一般の人でもなんとなくわかるように演出している。
配役も妙味がある。岸井ゆきのさんや本多力さんとか、実力派を揃えつつの、バラエティ的なノリで盛り上げてくれるおぎやはぎの小木博明さんや上地雄輔さんを配置する。
ちなみに前田建設ファンタジー営業部は実在して、実際にWebサイトも持っている。映画撮影秘話なども載せているので、作品を好きになった人は見に行ってほしい。
ヤマギワMVPはヤマダ役の町田啓太さん。掘削について嬉しそうに語るその姿は、技術者そのもの。セリフまわしもかなり工夫されていて、難しいことを話していても、聞き入ってしまった。
本多力さんもさすが。特に前半は本多さんの推進力がなければ成立しなかったと思う。
企業とのコラボの映画も面白いな。勉強にもなるし。でも難しいところ、地味なところをきちんとエンタメに仕立て上げないと興行としては成立しない。そういった意味で演出が見事だったと思う。
エンドロールも社会人のお仕事的なものになっていて、見ていて楽しかった。