無名の新人2人を主役に迎え、主役級の俳優をわきを固めた贅沢も新鮮な映画。
石井裕也監督作品「町田くんの世界」
原作が同名タイトルの漫画だが、キャラクターを忠実に再現するのではなく、世界観は活かしながら、独自のキャラクターを作りあげたところが見どころ。ムチムチした町田くんのフォルムも親近感がわく。軽く兄弟にバカにされているところも、逆に愛が感じられる。町田くん役の細田佳央太さんのビー玉のような目も役に合っている。私は映画の町田くんの方が好きだ。
フレッシュな主役2人を支えるわき役陣が超豪華。岩田剛典 さんや前田敦子さんが高校生役なんて、違和感しかないのだが、その違和感が漫画チックで、いい意味で現実離れしている世界を作り上げている。
ヤマギワMVPは猪原奈々役の関水渚さん。瑞々しいけど、クセがある。最後のプールのシーンも素敵だった。幅広く役をこなせそうで今後に期待。
主役2人が全力疾走するなか、ちょっとしか登場しないキャリア組が「どうだ!」と言わんばかりの演技をするのが、なんだか微笑ましい。奈々に恋する亮太役の仲野太賀さんの切ない表現も素敵だったし、高畑充希さんの安定感に風格すら感じた。
後半の風船シーンが冗長だったような気がするが、最後のプールのシーンは二人の透明感を際立たせていてよかったと思う。
ところで、風船のシーンの後に必ず奈々がはっと目覚める。この映画のすべて、町田くんの優しさも、好意を持ってくれた疎外感を感じていた自分を受け入れてくれたクラスメートも、すべては奈々の夢だったのではなかろうか。この愛に満ちた世界はすべて。