この作品を実写化するだけでも、評価に値する。独特な世界観があり、何か特異なビジュアルの登場人物が出てくるわけではないが、魔女が出てくるファンタジー感を表現するのは難しいと思っていた。
柳明菜監督作品「いなくなれ、群青」
原作は、河野裕さんの小説「階段島」シリーズの第1作。ある日突然、「階段島」に連れてこられる。そこでは居住はもちろん、教育も提供され、ネットで好きなものを取り寄せることもできる。でも島からは一歩も出られない。なぜなら、住人は「誰か」に捨てられたからだ。
今を時めく横浜流星さん、 飯豊まりえさんが出演するとあって、新宿ピカデリーのスクリーンも大きい~!いつもミニシアターばっかり行ってるので、新鮮だった。
映画を見るときは、原作を後で読むようにしている。そうでないと、「このストーリーの端折り方はいかがなものか」「このキャスティングはどうよ?」など文句を言いたくなるものだ。
今回は映画化を知る前に読んでしまったので致し方ないが、美しい映像に魅せられてあまり文句は出てこない。豊川がスッとバイオリンを構えるシーンだけでも、息をのむように美しい。これ以上はあの世界観に近づけようがないという感想だ。ナイストライだったと思う。
ただ、原作の世界観をそっくり再現しなくても、原作を超えることは可能だったのではないだろうか。苦悩を抱えて島にやって来た登場人物のキャラクターをもっと丁寧に描いたら、二人が魅かれ合う過程をもっと繊細に表現したら。シリーズ化も夢ではなかった。
トクメ先生も、もっと生かせなかったかなあ。それでも教壇に立つ意味がストーリーになると思うんだけど。原作は心情に迫るような描写はなく、それが世界観を生み出していたけど、映画ならもっと違う表現ができたと思う。
といろいろ言ったけど、キャスティングはすごくフィットしていて、単に人気どころを集めただけではないとわかる。特に飯豊まりえさんは原作から生まれ出たようなまっすぐさ、強情さ、純粋さが際立った。
ヤマギワMVPは ドナ役の黒羽麻璃央さん。出番は少なかったが、原作よりももっと存在感がある。特に七草とドナと会話しているシーンは、 原作だと 村上春樹さんっぽいせりふ回しでうーん?という感じだったので、映画の方がさらに良く見えているのかもしれない。
監督は商業映画初の監督作品かな?これからも活躍してほしい。