生成AIがホワイトカラーになる日

こころみマガジン

以前、AIに長く携わる方から「いずれは生成AIで部署ごと置き換えられるだろう」という話を伺った。

それはChatGPTが彗星のごとく現れ(たように見え)、連日メディアを賑わせていた2022年末のこと。

置き換えられる部署というのは、具体的にはバックオフィス部門を指す。

今までは法務、経理など専門知識を求められている部署でも、生成AIは同等の知識を持っているので、有識者と同等に仕事ができる。

「提出されたものを細かくチェックして、OKなら確定して○○システムに入力…」という社内のいたるところにあるワークフローも、生成AIなら(いずれは)丸ごと自動化できる。

生成AIができる範囲を広げていけば、その延長線上に人間が一人もいない部署が誕生する、というわけだ。

その時は「とはいっても、それは20年先の話よね」と思っていたが、今となっては「本当にその時代がやってくる」ことが実感できる。

SaaSの死?!「Claude Cowork」の登場

2026年早々に飛び込んできたニュースが、「Claude Cowork」のリリースだ。

Claudeを開発したAnthropic(アンスロピック)社は2021年に設立された。

創業者はOpenAIの元幹部。OpenAIからスピンオフしたのは「どうすればAIが人間に牙を剥かず、倫理的に振る舞い続けるか」という安全性の危機感だった。

OpenAIのような商業化の道を歩むのではなく、「安全性と透明性を第一に追求する非営利に近い組織」を目指したのだ。

ChatGPTやGeminiなど、他のAIと大きく異なるのが、AI憲法の存在。

判断の拠り所となる大原則を設け、Claudeがそれに照らし合わせて判断できるような仕組みだ。

これによってClaudeがなぜそうするのか、理由とともにアウトプットできるというイメージになる。

「これはダメ、あれはダメ」と個別に教えるより、「なぜ人を傷つけてはいけないか」を理解させるのと同じようなこと。原則に基づき、思考する。

これによって「個人でも企業でも安全にAIが使える」という信頼性が、Claudeのブランドになっている。

それが「軍事利用を制限する」志向につながり、国防省と対立しているのだが…

「Claude Cowork」に話を戻そう。

Claude Coworkはエンタープライズ向けのもの。営業、マーケティング、財務、法務といった企業なら必須の業務が自動化できる。

例えばCRMとClaudeを接続し、見込み客のリサーチから商談後のフォロー、毎朝の営業レポートサマリー生成などのマルチタスクを自動化できる。

承認制が基本なので、人が主導権を持った形でClaudeに業務を丸投げできるという特長もある。

見出しの「SaaSの死」とは、「ERPやCRMが無くても成立する」というわけではない。

あくまでも基幹業務周辺のSaaSなら、Claudeだけでできちゃうかもしれないということだ。

企業は生成AIをどれくらい活用しているのか

では実際問題、企業はどのくらい生成AIを利用しているのか。

様々な企業のお話を聞くが、生成AIというキーワードは、多くの場合「将来の展望」に入ってくる。

もちろん、議事録の要約とか、メールの下書きとか、SaaSのAI機能とか、事務作業を補助する目的では使っていると思うが、業務プロセスに生成AIを組み込むまではいたっていないと感じる。

そもそもAIの使用を禁止している企業も多い。

しかし、設立時からITファーストである企業では、ビジネスプロセスに生成AIが組み込まれ始めている。

例えばDeNAは自律型AIソフトウェアエンジニア「Devin」を導入し、全社展開している。私のようなライターもそうだが、プログラミングも生成AIとは親和性が高い。

ソフトウェアを発注するユーザー企業に話を聞くと開発元から「AIでコーディングするけどいいですか」と許可を求められることが増えたという。

また規模が小さな企業こそ、生成AIを活用しやすいとも言える。生成AIの守備範囲が広いので、結果的にコストダウンできるし、大がかりな変化を必要としない。

もちろん、未来がどうなるかわからない。しかし「思ったより人間の仕事をAIが肩代わりする」時期は「思ったより早く」来る。

その時、人間の仕事の在り方はどのようになっているのだろう。