いつも原作がある映画は、映画を観てから原作を読むようにしている。そうすると「原作の世界観が~」とか不満を持つこともないし、映画では省略されている部分を映像を思い出しながら小説で確認するのも楽しい。
しかし今回は原作の方を先に読んでしまった。しかも直木賞と本屋大賞のダブル受賞という名作で、音楽好きでない人も魅了する物語の推進力、曲の表現の豊かさ。これを映像化ってできるんだろうか。
しかも、正直ピアノコンクールの映像化ってどうなの?と思うところもあり、実はあまり観る気がなかったのだが、そんな自分は完全に間違っていた。
石川慶監督作品「蜜蜂と遠雷」
コンサートホールのざわめき、拍手、雨のしずく、鳥のさえずり、ひとつひとつの音に表情があり、めちゃめちゃ音に凝っている。
最終予選のオケとの共演もド迫力。ちょっとこれはすごいんだけど。
曲の部分部分でオーケストラの音のバランスも変えている。
ヤマギワMVPはマサル役の森崎ウィンさん。原作のマサルを超えてきたからというのが理由なのだが、4人ともすごくよかった。みんなキャラクターのイメージに合っていたと思う。
マサルがいいと思ったのは、原作よりもマサルの苦悩を掘り下げたからかもしれない。この長編をよくまとめていて、独自のエッセンスもうまく織り込んでいる。
おすすめは2次予選の「春と修羅」。世界で活躍する作曲家・藤倉大さんの作曲で、曲の後半は四者四様のカデンツア。なんて贅沢なんだ~!
こちらが 藤倉大さんのインタビュー。やっていることは8歳、9歳のころから変わらないと。すごいわ~。「春と修羅」も異次元の空間を感じさせる素敵な曲だった。
大好きなドビュッシーの名曲「月の光」を月夜に切り貼りして端折ったのが不満だが、音楽好きでなくても音楽の素晴らしさを感じてもらえるのではないかと思える作品。
ぜひ音響設備の良い映画館で、この音の素晴らしさを堪能してほしい。