巷では「愛がなんだ」とセットで鑑賞するのが流行りらしいよ。
穐山茉由監督作品「月極オトコトモダチ」
那沙は、男友達をレンタルして、恋愛に発展しないかを実験する雑誌の連載を担当している。レンタルしたのは自称「恋愛に発展しないスイッチ」を持つ草太。月極で契約するとカードを渡されて、1回会うごとにハンコを押す。
ある日急に熱を出した 那沙を家まで連れ帰った 草太は、 那沙と同居する珠希と出会う。互いの音楽性に惹かれて二人はバンドを結成する。二人の姿に那沙は動揺を隠せない。
友情でもなく、恋愛でもなく、でも抑えようもない思いに揺れ動く那沙に心が痛くなる。「愛がなんだ」もそうだが、こんな非王道のラブストーリーが最近では支持されているのかな。
見どころはなんといっても那沙を演じた徳永えりさんの演技力。徳永さんの「表情筋」をほめたたえる人がいるが、確かに徳永さんが顔の筋肉を少し動かしただけで、 那沙が どんな気持ちでいるのか、観る者に痛いほど伝わる。これといってダイナミックな展開もなく、いたって穏やかなストーリーなのだが、終始ヒリヒリするような緊張感があるのは、徳永さんの技量があってこそだと思う。
もうひとつの見どころは、草太役の橋本淳さんの美しさ。女優さんをきれいに撮る映画はたくさんあるが、これほど男の人を美しく撮る作品は他にはないと思う。自分レンタル業をやりつつ音楽を作る草太の繊細さが映像で余すところなく表現されている。
ヤマギワMVPは珠希役の芦那すみれさん。あの歌声は確かにこの映画の世界観を表現している。きちんと歌うのではなく、生活の一部としてラフに歌うのがこれまたかっこいい。表情も豊かでキュート。こういう表現ができる女優さんがこの世にいるのが不思議。奇跡のキャスティングだ。
珠希と草太がつながっていくあの歌を、背を向けた那沙はどんな気持ちで聞いていたんだろう。
ところで穐山監督は外資系企業でPRマネージャーを務めながら映画「月極オトコトモダチ」を撮影した鉄人。
大変な思いもされたと思うが、生活費の心配をせずに創作に打ち込めるのはいいことだなと思ったり。この映画がヒットして監督に専念されたら嬉しいなと思ったり。
公式HPで「レンタルなんもしない人」さんがコメントを寄せていたのには笑ってしまった。なんでもトークイベントにも登壇したらしい。”なんもできかねる”人なのに大丈夫だったのだろうか・・・?
レンタルなんもしない人さんは報酬をもらわないが、草太と同じようなことをしているわけで、実際に世の中に求められている役割なのかなとも思う今日この頃。